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...... 2023年09月13日 の日記 ......
■ 《 対話と描写 》   [ NO. 2023091301-1 ] ch

【 弦楽六重奏曲 Op. 4「浄められた夜」】
         
シェーンベルク,アルノルト 〔墺→米〕
(1874.09.13〜1951.07.13) 77歳  
          

            
ベルクと共に「無調の音楽」「12音音楽」の手法を
生み出し、二十世紀の音楽に大きな影響を与えた
シェーンベルクは、149年前の9月13日に
ウィーンで生まれた。

10歳に満たないうちから、ヴァイオリンのレッスンや
作曲を始めたが、15歳で父を失い、その後専門的な
音楽教育は受けず独学で多くのことを勉強し、
20歳のときに2歳年長のツェムリンスキーについて
数カ月間、対位法を学んだのが、唯一の
正規の音楽教育だった。

26歳のときにツェムリンスキーの妹マティルデと
結婚したが、彼女は49歳のときに亡くなり、
翌年著名な演奏家ルードルフ・コーリッシュの妹の
ゲルトルートと再婚した。

ユダヤ人であるシェーンベルクはドイツで
活躍していたが、ヒトラーがユダヤ人迫害政策を
始めると、それを逃れて、1933年にアメリカに亡命し、
市民権を得、ヨーロッパに帰ることなく、
ロサンジェルスで76年の生涯を閉じた。

シェーンベルクは、ユダヤ人としてナチスに
迫害されたときに、公然とユダヤ教に改宗して
自己の立場を明らかにしたが、このような性格は
一生を貫き、作曲上でもそれがよく感じられる。

また、彼は音楽ばかりでなく絵の才能にも優れていて
表現派の画家として、自画像も残されている。

シェーンベルクは25歳のとき、世紀末の苦悩と
憂愁を歌ったドイツの詩人リヒャルト・デーメルの
詩に感銘をうけその内容と情感を生かして
「浄められた夜」を作曲した。

『2人の男女が寒い荒涼とした林の中を歩いている。
月が高いカシの樹の上を渡っている。
雲一つない月明かりのなかに黒々とした樹立ちの
骨ばった枝が手をひろげている。

女が話しだす。
女は寄り添っている男に罪の告白をする。
女は子供を宿している。
だが、それは別の男の子供であって、彼はその子の
父親ではない・・・彼女は自分が祝福されたものと
思っていたが、いまは人生が彼女に
報復しようとしているのだ。
彼女がほんとうの愛を捧げたのは彼女と共に月明の
林のなかを歩いている男なのだから。
彼女は自分についてくる月をうつろな眼で
見上げながら、よろめきがちに歩いてゆく。

男が口をきく。
罪の意識で心の重荷にしないでくれ。
世界がどんなに明るく光り輝いているか見てごらん。
すべてのものが光り輝いているではないか・・・・
2人の男女は凍った月明かりのなかをさまよっているが
互の愛の炎が相手の心を温める。

男は言う。
それはまた小さな未知の子を浄めるだろう。
そして、彼女はその子を彼の子として生むのだ。
彼女は彼のなかで光り輝くものをよびさまし、
彼をもまた幼な児にしてしまったのだから・・・
2人の男女はたがいの腕のなかに沈む。
2人の呼吸は風のなかで接吻をかわす。
男と女はいつまでも明るい月光のなかを
さまよいつづける。』

二人の男女の対話と、それをはさむ
二人の歩みの描写とからなっているので、
曲の構成もそれに従っている。

1899年に弦楽六重奏曲として作曲されたが、
後にコントラバスを加えて、弦楽合奏として編曲された。



(管弦楽)ニューヨークフィル・ハーモニック
(指揮) ピエール・ブーレーズ      
          ♪ 私が聴いた音源 ♪




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