 【 歌曲「フィディレ」】 デュパルク,アンリ 〔仏〕 (1848.01.21〜1933.02.12) 85歳《 痛ましい生涯 》
 デュパルクはフォーレと並び、フランスの近代歌曲の 名曲を残した作曲家だが、37歳のときに奇妙な 神経病に冒されて、創作活動ができなくなった。
その後、48年間外界との一切の交渉を絶って スイスの山中に引きこもり、89年前の2月12日に 南仏モン=ドゥ・マルサンで85年の生涯を閉じた。
彼は、数多いフランクの弟子の中でも、 最も早くから師事していて、中学生のころから フランクにピアノを習っていた。
作品は交響詩やたくさんの歌曲を作曲したが、 厳しい自己批判の結果、わずか16曲を残して、 他は全て破棄してしまった。
精選された16曲の歌曲は、甘美な流麗さ、 激しい感情の起伏、哀切の情など、あらゆる表現を 網羅していて、フランスの近代歌曲の形成のために、 かけがえのないものとなっている。
ルコント・ド・リール(1818〜1894)の 穏やかで格調高い詩に作曲された「フィディレ」は、 1882年の作品で、しのびよる官能に彩り、 精緻の限りに歌いあげたヂュパルクの 絶唱というべき傑作である。
(歌詞大意) 涼しいポプラの木蔭に草はしとねのように柔らかい。 丘のせせらぎは苔がむし、花咲く牧場から流れでて、 暗い林の中に消えている。
いこえよ、おお、フィディレー! 真昼の太陽は草の葉にふりそそぎ、 おまえを眠りに誘っている。
日ざかりに、ひとり蜜蜂だけがクローバーや ジャコウ草のまわりを唸りながら飛びまわっている。 小径の曲り角には熱気がたちこめ、 しなった麦の赤い花はうなだれている。 小鳥たちは翼で丘をかすめて飛び、 野ばらの蔭を探しもとめている。 だが、やがてきらめく陽も傾き、 熱気もしだいにおさまるころ、 待ち焦がれている私に、 おまえのやさしい微笑と口づけを贈っておくれ。
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