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...... 2019年06月13日 の日記 ......
■ 《 一種の交響詩 》   [ NO. 2019061301-1 ] e_or

【 村のバイオリン弾き 】

ドローヌ,マクス 〔仏〕
(1875.06.13〜1959.05.15) 83歳



作曲家のドローヌは、144年前の6月13日に
フランス東部ブザンソンで軍人の家庭に
生まれ、パリで83年の生涯を閉じた。

ブザンソンという町は、川がリング状に
大きく蛇行している場所に発達していて、
昔から軍事的な要衝として知られる。

ドローヌは、指揮者、批評家としても活躍した。
パリ音楽院でマスネーから作曲を学び、
若手作曲家の登竜門のローマ大賞を獲得、
3年に渡りローマに留学したが、この間にウィーンや
ミュンヘンまた、ワーグナー音楽の聖地の
バイロイトなどをしばしば訪れている。

その後はアンジェの町の音楽顧問を3年に渡り
務めた他、パリを本拠に作曲、指揮、ピアノの
分野で活躍した。

マスネの弟子であったドローヌは、人の声に
つよく魅せられたこともあり、オペラや宗教カンタータ、
歌曲によって成功を収めた。
作品は管弦楽、室内楽、声楽と幅広い分野に渡るが
とりわけオペラが彼の最も好きなジャンルだった。

ワーグナーに習った旋律の持続的な発展を、
音楽的なベースにして、ロマンの香り溢れるを曲を
作ったが、同時にフランクの流れを感じさせる、
内面的な厳しさも持ち合わせている。

こうした二面性は厳格な軍人の家庭に生まれながらも
自由で人間味豊かな音楽家としての道を歩んだ
ドローヌの人生が反映されたといえるかもしれない。

フォンテンブロー音楽院院長、パリ音楽院教授を経て、
オペラ・コミック座の音楽監督に就任するなど
パリ音楽界の要職を務めた。

1910年にジョルジュ・エネスコのヴァイオリンと
ガブリエル。ピエルネの指揮により初演された
「村のバイオリン弾き」は3つの楽章で構成され、
ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲としての
性格をもっているが、ドローヌはある物語にそった
内容を持っていることを明らかにして、
協奏曲ではなくて、ヴァイオリンソロを用いた
3つの部分からなる一種の交響詩であると
説明している。

故郷を離れたいという願望と、なにはさておき村に
戻らなくてはならないという執拗に心を引き裂かれる
フランソワという名のある村のヴァイオリン弾きのお話。

フランソワの演奏を聴こうと村のあちこちから
人々が集まり、農民も町の人も彼が奏でる古くから
受け継がれてきたメロディにうっとりと聞き惚れる。

ところがある日、ロマ(ジプシー)の一団が村を
通りかかり、フランソワはその音楽に新鮮さを感じ、
すっかり魅了されてしまった。
そして、後を追い村を出てロマたちから
彼らのメロディやリズムを学んだ。

しかし、フランソワはしばらくして、言いしれぬ
寂しさに襲われ村に戻ってきた。
その帰りは村の人たちに喜びを持って迎えられたが、
フランソワの音楽は全く様変わりをしていた。

聴衆は演奏の途中でポツリ、ポツリと去り、
やがて誰もいなくなってしまった。
フランソワはヴァイオリン弾きを止め、
労働者に身を転じた。
けれども、夜更けになると楽器を取り出し
彼の胸を掻きむしり続ける音楽を
ひっそりと奏でた。



       (ヴァイオリン)マーク・カプラン
       (管弦楽)  バルセロナ交響楽団
       (指揮)   ローレンス・フォスター
              ♪ 私が聴いた音源 ♪





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