 【 歌曲「秋」D. 945 】
シューベルト,フランツ・ペーター 〔墺〕 (1797.01.31〜1828.11.19) 31歳 チフス

シューベルトの生涯はあまりにも短かかった。
1828年秋、兄の家に転居。 10月初旬 兄と共にアイゼンシュタットのハイドンの 墓に詣でる。 10月31日 「赤十字」で会食したが、魚料理一切れを 口にしたのみで後は食べられず、これが 最後の食事に。 11月 3日 教会で兄フェルディナントの「鎮魂歌」を 聴いたが、その後病床につく。 11月 4日 ゼヒターについて対位法の勉強を始めたが、 授業はこの一回で最後となる。 11月16日 チフスと診断。 11月19日 午後3時31歳10ヶ月の短い生涯を終え 永い眠りについた。 「ここで終わりだ」と言い残し・・・
シューベルトの作品は、人の心の自然な思いが、 素直に流れ出たロマンティックな作品で、 なんの気取りもなく、あまりに純粋なので、 理屈抜きに聴き手は胸にじんとくる。 健康的で、ひねくれたところのない音楽なのだ。
「歌曲の王」と呼ばれるシューベルトは、 600曲以上の歌曲や交響曲、ピアノ曲を 作曲しているが、リートとよばれる詩と旋律が 一体となった芸術歌曲は特に有名である。
31年の短い生涯に彼の交遊は男性ばかりで 華やかな女性との話題がない。 ピアノを教えていたカロリーネ、歌手のテレーゼが 登場するが、結婚はしていない。
シューベルト組といわれる画家、詩人、劇作家、 官吏、音楽家の取り巻きが多くいて、 彼はそのうちの何人かと同居生活をしていた。
画家のシュヴィントはシューベルトが亡くなった日の 日記に「シューベルトは死んだ。われわれには 彼あってこそ楽しくもあり、美しいくもあった ものを・・・」と書いている。
飲水からチフス菌が入り、2人の医師の 誠意あふれた治療のかいもなく、 短い生涯を終わり、永い眠りについたとある。
シューベルトが亡くなった年の4月に作曲した 哀愁と悲哀に満ちた傑作の歌曲「秋」は、詩人の ルートヴィヒ・レルシュターブ(1799~1860)の 詩に曲をつけている。 他に歌曲集「白鳥の歌」など10篇を作曲している。

秋
風がざわめく これほど秋めいて 冷たく 野は荒れ果て 森は葉を落とす
おまえたち 花咲いていた野よ おまえ 日の光の照っていた緑よ こうして人生の花々は 枯れ果てるのだ
雲が流れる これほど暗く灰色になって 星々は 天上の青で消え去った
ああ天の星が 逃げるように 人生の希望は 沈み去るのだ
おまえたち 春の日々は バラに飾られ 私は恋人を 胸に押しつけたものだった
丘の上を冷たく ざわめき去れ 風よ こうして愛のバラは 死に去るのだ
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