 【 オラトリオ「天地創造」】 ハイドン,フランツ・ヨーゼフ 〔墺〕 (1732.03.31〜1809.05.31) 77歳
 ハイドンは、1790年から95年にかけて2度、 イギリスを訪れている。 その折、力強く根をおろしているヘンデルの オラトリオの数々に接し、雄大な音楽の説得力に 深い感銘を受けた。
帰国後本格的な作曲に着手し、1798年に 「天地創造」を1801年に「四季」を生み、 古典派オラトリオの境地を開いた。
ヘンデルと同様に、宗教的な題材によりながらも 教会音楽としてではなく、きわめて現世的に 劇的で自由な態度で展開させていて、イタリア風の 派手な技巧的なアリア、ドイツ民謡風の簡潔で 素朴な魅力ある旋律も重用されている。
天地創造の台本は、英国の詩人リドレーが ミルトンの「失楽園」にもとずいて、ヘンデルの オラトリオのために作ったものだが、それが 果たされなかったので、ハイドンの手に移り、 ヘンデル愛好家のドイツ貴族の ヴァン・スヴィーテン男爵によってドイツ語に訳された。
全体は3部(33曲)からなり、第1、第2部では 6日間にわたる神の天地創造の経過が 3人の天使によって物語られる。 第3部では楽園にあるアダムとイブとを扱う 構成となっている。
完成までに3年の月日を費やし、1798年4月29日に ウィーン、シュヴァルツェンベルク宮において、 ハイドン自身の指揮で初演された。 この演奏会は私的なもので、公開の初演は 翌99年3月19日に行なわれた。
レチタティーボでは、しばしば描写的な 自然模倣となって現われ、蜜蜂の羽音、 蛙の鳴き声、小川のせせらぎ、雷鳴、 バラの香りなどの自然描写が管弦楽部と 声楽部によって、効果的に音化されている。
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